2012年10月16日

ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?

久しぶりに、本のことを書きたいと思います。

不覚にも電車の中で読んでいて、涙が止まらなくなり
先を読み続けることが出来なくなった本です。

「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」

著者:アレン・ネルソン 講談社

NYで生まれ育った、アフリカ系アメリカ人の著者、アレン・ネルソン。
当時、母国でありながら肌の色の違いなどで差別を受け
貧困にあえいでいましたが、アメリカ人として国の為に戦えると信じ、
高校を中退して海兵隊に入隊し、そこで人を殺す訓練を受けます。

ベトナム戦に参戦。1年以上もベトナムで過ごし帰国した彼は
心的障害に苦しみます。変わり果てた彼に、「人殺しは息子ではない…」と、
母親から拒絶され、家を追われます。

ホームレスになったアレン・ネルソンは小学校の教師をする
同級生に出会います。
彼女は彼に、ベトナムで経験したことを生徒に話して欲しい、と頼むのです。
重い気持ちを押し隠し、淡々とベトナムの子供たちの様子を話します。
しかし、その時にネルソンにとって一生を変える質問に出会います。

ー「ミスター・ネルソン」女の子はまばたきもせず、わたしをまっすぐに見つめると、
たずねました。
それは、わたしにとって運命的な質問でした。
「あなたは、人を殺しましたか?」
だれかにおなかをなぐられたような感じがしました。
わたしの体はこわばり、重くなり、教室の床にめりこんでいくような気がしました。――本文より

彼は思わず目をつぶります。どう答えるべきか、真実を言うべきなのか。
にっちもさっちも行かない状態で,彼は5分間も目を閉じ続けたままでした。

 やがて自分の腰に手をやる感触を感じ,びっくりして目を開けると,
答が分かったのか,その女の子が腰を抱きながら「ネルソンさん,かわいそう!」
と涙を見せてました。

 小さな声でYesとつぶやきながら,彼の目からぼたぼたと涙が出てとまりません。
その涙で,クラスの子がみな彼を囲み,みんなで泣いてくれました。

 ここから彼の生き方が変わったのです。
大学に行こうとして勉強を始め,精神科医に積極的に治療を受け,
悪夢を見ずにぐっすり眠れるようになり,さらには結婚をして長女が産まれたことが,
過去のベトナム先生の体験を「伝えるべき事」と感じることにつながり,
講演活動を始めることになりました。

衝撃的な事実や言葉も、つつみ隠さず記されています。
運命の質問を機に、著者アレン・ネルソンが伝えたかった
戦争は絶対に起こしてはならない、という思いのすべてが、
この本に詰まっています。

子供でも読める平易な文章ですが、戦争の本質、ベトナム戦とはどういうもので
あったのかが、驚くほど簡潔に良く描かれています。

ネルソン氏は、ベトナム戦で使用した枯葉剤の後遺症と言われている
多発性骨髄腫で、5年前に亡くなられていますが
日本国憲法九条の存在を知り、何度も来日して各地で講演をされました。
その講演記録なども、ネットで読むことができます。


私たちは戦争を知りません。
日本はもう、70年近く、憲法9条に守られて戦争をしかけることなく過ごしています。
今、尖閣や竹島や、日本の防衛体制を根本から揺るがすような
問題が起きています。
そんな中で、自衛隊容認や、憲法の改正といったことが
まるで当然なのだ、必然なのだ、という論調が強くなっています。

でも、この本を読むとわかります。
正しい戦争など、一つもありません。
戦争をする、ということは、人殺しをする、ということです。
殺される方も、殺す方も、どちらにとっても傷は深く
戦争でなにがしか得をするとすれば、それは国家とか、軍やそれに関係する
企業であって、個人ではありません。
人は、生きてあるために生きているし、愛し助け合うために自分の命は
あります。
これは、大義名分とか、きれいごとではありません。
人の命は、誰かを殺したり、殺されたりするためには決して利用されては
ならない、という、とても簡単明瞭な真実の話です。

5〜6年生になれば、もう読むことの可能な本です。
それだけに、心の奥深くに、まっすぐに刺さってくる本です。

直視したくない現実を、こういう形でなら受け止められるかもしれない。
そう感じさせてくれる、貴重な著書です。
是非、ご一読を。
posted by yukiko at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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