2018年04月16日

ヘルダーリンの続き

18世紀末から19世紀のドイツの詩人ヘルダーリンは
1770年、なんとベートーヴェンと同じ年に生まれています。

18歳でテュービンゲン大学に進学し、未来の大哲学者ヘーゲルや
シェリングと出会い、生涯親交を結びます。

私がヘルダーリンの詩に深く傾倒するきっかけとなったのだ
饗庭孝男著「西欧と愛」の中で描かれる
Liebend unterzugehen,In die Fluten der Zeit sich wirft
(愛しながら没落しようと、時の潮に身を投げ入れる)
若い妻ズゼッテと家庭教師の青年ヘルダーリン
地上の愛に絶望し、天上の幸福を願った聖なる愛の詩集
「ヒューペリオン」でした。

20代半ばのヘルダーリンは家庭教師として招かれた家の夫人
4人の子の母であるズゼッテと、禁断の恋に落ちます。
二人は引き裂かれた後も逢瀬を続けますが、彼女が早逝します。
その頃書かれたのが「ヒューペリオン」です。

実はヘルダーリンについては2007年3月7日この場で書いていて
ズゼッテとの顛末やヒューペリオンの詩については
そちらをご覧頂ければと思います。

ヘルダーリンは深いショックを受け、心は彼女と共に亡くなったと
感じ、統合失調症を患います。
その後、精神的に回復の見込みがなくなった時に彼のファンに
引き取られ「ヘルダーリンの塔」と呼ばれる所に引きこもります。
亡くなる73歳まで彼は、精神の病の薄明をさ迷い続けながら
古代ギリシア思想への回帰、自然回帰を謳う様になり
独特の深遠なる世界観を表現することになります。

彼の詩は死後100年経って、高い評価を受けるのです。
ズゼッテとの愛の詩、そして難解だとされる晩年の叙事詩。
文学研究科のペーター・ソンディは、ヘルダーリンの後期の
詩作に通じるものとして、ベートーベン弦楽四重奏曲の晩年と
セザンヌの晩年の絵画作品を挙げています。

ヒューペリオンは私の最も好きな詩集ですが
晩年の叙事詩は、狂気と正気の狭間から搾り出され
難解ながら壮大で叙情溢れるヘルダーリン独自の世界観があり
それは、本当に、言葉の芸術だな、と感じるのです。

そうそう、松本清張がヘルダーリンを題材に短編小説を書いています。
「ネッカー川の影」
こちらも秀逸な短編です。テュービンゲンに行ってみたくなるような
ヘルダーリンの狂気と正気に触れられるような作品です。






posted by yukiko at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/183000414
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック