全治1カ月と言われた手の靭帯の損傷が、1か月経っても2カ月経っても治らず
結局、靭帯が伸びたのではなく、切れた、ということで、
完治まで半年間、かかりました。
もう、本当に弾いていけないのではないか、と、何度も何度も不安になり
やっと弾けるようになってからも、焦ってはいけない、と思いつつ、練習しすぎて
肩甲骨の周りの筋肉を痛めてしまったり、とほほなこの秋。
とにかく、ピアノの前ではなく、部屋の中ではなく、外へ、外へ、と
この秋は紅葉を見て回っています。
赤城、軽井沢、筑波山、箱根…毎週水曜日がお休みなので、日帰りで紅葉狩り。
今週は、いよいよ埼玉県内、森林公園が見ごろでしょうか。
どこの紅葉も綺麗です。どこの空気もすがすがしく、どこの青空も高く澄んでいます。
日本は、本当に美しい国だと、改めて思います。
黄金色に輝く銀杏並木、赤、オレンジ、黄色の繊細なレースの様ないろは紅葉、
それらの木々は、一瞬の輝きの後に、全ての葉を落として、寒々とした
枝を広げ、まるで枯れてしまったかのように息をひそめて、冬を乗り越えます。
北風にさらされ、雪を抱き、幾多の凍える夜を経て、芽をはぐくみ、伊吹く日まで
春を待って、その場に立ち続ける。
多分、今の私はそんな時なのかもしれない、と、ふと考えます。
春夏と、全力で走り続けて、秋を迎えて全ての葉を落として、春を待つ。
人生の最終コーナーを回るのはまだ先かもしれないけれど、少なくとも
今は、少し羽を休めて、自然に身を任せて、来る時に備えて焦らず時を
重ねる。必ず芽吹き、また花をつける日も来ると信じて。
きらきらと、まるでレースごしに陽の光を通すように、紅葉の木々から
光が輝いて見えます。
そして一陣の風が吹いて、木々が丸裸になる。
その刹那、樹は、一本のただの木になって孤独に、潔くすくっと佇むかのようです。
自身と向き合う時。
内省と沈黙の時。